設計士が
事例を紹介
Case study #01大阪府大阪市北区 新築施工
大阪市北区の好立地
利便性・機能性・感性を備えた
細やかなこだわりの詰まった
都心のマンションのような家
タワーマンションを検討される方が
「良いね」と思える一戸建てへ
まずは今回の物件についてお伺いしたいのですが、どのような方向性で建てた物件になりますでしょうか。
今回は、大阪市北区という都心の物件でしたが、施工段階では施主はいなかったので、周辺の立地条件からお客様のイメージを固めました。 具体的には30歳代の共働き夫婦を想定し、同じ区内だとタワーマンションも多く建っていますので、内装のイメージはタワーマンションをご検討中のお客様が「この戸建てもいいな」と思っていただけるような家を設計する方針になりました。
タワーマンションのような一戸建てですか?
そうですね。タワーマンションに興味があるけど、たとえばペットを飼いたい、子供が走れるように一戸建てがいいなど、金銭面も含めて色々な事情で諦めているかた向けの一戸建てがあったら・・・。という感じでコンセプトを作っていきましたね。 あと、初期費用は一戸建ての方が高いかもしれませんが、マンションは駐車場や修繕積立金など家賃以外にもいろいろと費用がかかるので、長い目で見るとお得になるかもしれません。
なるほど。内装はタワーマンションのようなコンセプトとのことですが、外観はいかがでしょうか。今回の物件は黒でシックにまとめられていますが、こだわりなどはありますでしょうか?
外観は奇をてらわない事を大切にしています。
常々設計するときに考えていることは、その街に溶け込む家であることと、そのエリアのシンボル的な家になればいいなと思って設計しています。近隣住民の方が、建てた家をまねしたい・参考にしたいと思って頂けるような家にしたいと。
あとは外観だけを考えるのではなく、中と外両方を同時に考えることも大切にしていますね。
時間が家に加える変化こそが趣
経年美化する外観を楽しんでほしい
街に溶けこむ家とのことですが、外観がとても印象的なのでそこから詳しくお伺いさせていただきます。
まずなんといっても木目が印象的な外観ですが、狙いなどはありますでしょうか?
家はよく経年劣化という言葉が使われます。
今回の家では、経年劣化ではなくて経年美化にしたいと考え、自然素材である木や石などを用いました。
経年美化とは「年月が経つほど味わいがでる」みたいなことでしょうか?
そうです。
たとえば昔ながらの日本建築って、土や木や石など天然素材が使われていて、時間がたてばたつほど趣ある雰囲気になりますよね。そういう本来の日本建築の素材の力みたいなものを取り入れたかったので、木は天然素材を使用して、時間や年数で色が変化するようにしています。
それこそ太陽光が当たっているかどうかで場所ごとに色の違いが出てきますので、ほんとうに少しずつですが時間による変化を感じて頂ければと思っています。
例えば10数年後、住人の方が色を塗って頂くとまた違った雰囲気になるでしょうし、そこからさらに時間が経って、その色がなじみ、変化することで、その家にしか出せない味わいみたいなものが出てくるのかなと。そういった過程も楽しんでもらいたいと思って設計しました。
それは愛着が一層わきそうですね。ちなみに天然の木を使うのは珍しいのではないですか?
外観に天然の木を使う場合、使える材料には制限がありますので多くはないと思います。
今回使用した木材は、準防火にも対応出来るように加工されたものを使用しました。
帰宅したとき木のぬくもりを感じるよう
設計された玄関照明や床の色
外観の設備にも細かなこだわりが詰まっていると感じましたので詳しくお伺いさせて頂ければと思います。
まず玄関の外照明は木目をライトアップするように照らしていてとても綺麗ですね。
ありがとうございます。
照明はガレージは足元に照明があるのですが、玄関扉の前は上から照明をあてています。玄関前の照明の種類を考えたとき、下からLDKだとざらつくというか、いい塩梅にならないので、あえて上から木のぬくもりが活きるように設置しました。
手洗い場があるのもポイントですね。
そうですね。コンセプトのひとつにペットと同居するのにも快適な家。とあったので散歩から帰ってきた犬が足を洗ったりできるよう高さは調整しました。 あとは、車の洗車や夏にはお子様とプールなども楽しんでいただけるかなと思っています。
駐車場の床も黒っぽくなっているんですね。
これはカラークリートという商品ですね。
モルタルに色を入れた商品で、特別珍しいというわけではないのですが、外観全体を見たときのバランスを考え、木の素材感が前面に出てくるように、床はあえてトーンを落とした色にしました。
玄関は客人を迎えるこの家の顔
だから大理石の明るく華やかな空間に
玄関を入った1階はお風呂やトイレなどの水回りが入っていますね。
1階で最も目をひくのが床ですが、これは大理石でしょうか?
はい、大理石ですね。
今回、1階の中では玄関には特にこだわりました。
玄関は機能重視にする場合もあるのですが、今回はあえて逆に印象重視にしています。
そもそも玄関はお客様をお迎えする場所で、いわば家の顔となる場所です。また、玄関だけの対応になってしまうことも多いため、玄関の印象は大切にしたいと思っています。
それこそマンションやホテルがエントランスやロビーにこだわっているように、この家では玄関にこだわりました。
大理石は華やかになりますが、デメリットとして冷たくて堅い。ペットにも冷たくて堅い床は健康面で良くないのですが、玄関は長居する場所ではないので、今回はポイントとして使用しました。
デザインも極力シンプル。やりすぎると長年住んでいるとどうしても飽きが来ます。そうならないよう色を入れず、空間はあまり触らず、家具や小物でお客様自身がアクセントを作れるように設計しました。
今回の物件は1階にお風呂やトイレがありますがなぜでしょうか。
日々の暮らしの生活動線を考えると2階に水回りがあった方が、お風呂や洗濯は楽になります。
ただ、狭小地の場合、どうしてもリビングのスペースを出来るだけ広く取るために1階に水回りを配置するケースが多くなってしまいます。
施工の面で言うと、2階に水回りを設置する場合、外に配管をつけるのですがそのスペースが必要になります。1階だと配管は下に通すので、その分スペースを確保することも出来るんです。
トイレやお風呂などへのこだわりはありますでしょうか?
水回りはとにかくシンプルにしています。
こだわって色を付けると暗くなったり狭く感じたりするので、特にトイレは明るくなるようにしています。もしアクセントカラーを入れる場合でも、必要最小限で色目は統一させています。
狭小地のリビングにこだわり
広く見せる工夫と機能
2階はリビング・ダイニング・キッチンになっていますね。
まずはリビングでのこだわりはありますでしょうか?
リビングの床材も天然の木材を使っています。
ワックスは特に必要がないのでメンテナンスは楽かなと思います。下地に硬質の材料が入っているので凹みも少ないですし、なにより天然の木材はペットの足にも優しいので選択しました。
貼り方にもこだわっていて、長手方向に向かって貼ることで奥行が出るようにしています。
リビング照明はダウンライトや間接照明だけで、大きな照明はありませんがなぜでしょうか。
照明はお客様に選んでいただくケースが多いのですが、今回はあえてダウンライトだけにしています。 色々な家を見てきた中で、必要以上に明るすぎる家が多いと感じています。引き算が出来ないんです。 まず、部屋の隅々にまで光が届く必要はなく、逆に陰影がある事で雰囲気がでます。暮らしていく中で読み物をする、書き物をする時に暗いと感じた場所があれば、そこに照明を足せばいいし、調光で調整をすればいいのですが、今の家は通常が明るすぎるのでそれが出来ない。 今回の家は狭小地ということもあったので、あえて大きな照明を設置せずに必要な箇所に必要な分の光が届くようにしています。
リビングの一番のポイントはどこになりますか?
エコカラットですね。この部屋ではここを見てほしいですね。
部屋の湿度を調節してくれる素材で、一番のポイントです。
その他にこだわりポイントはありますか?
写真では少しわかりにくいのですが、樹脂サッシを今回は使用していて、窓の冊子が白なんです。 壁の色と同じ色を使用することで、部屋全体の色数を減らしています。リビングで家具が映えるようにあえて色を付けず白の樹脂サッシを選択しました。
全体を見渡すキッチンは家の司令塔
光と風の通り道を計算した設計
次にキッチンについてお伺いさせていただきます。
キッチンは対面型がやはり人気ですか?
対面式は全体を見渡せますし、使い勝手もいいのでよく使われますね。
キッチンは家の司令塔だと思うんです。キッチンにいても家族全員の気配を感じられることが重要。
リビングやダイニングにいる家族とコミュニケーションがとれる対面式はよく使いますね。
キッチンの背面収納を、壁全面ではなく上下のみにして、真ん中には窓がつけられていますがあえてでしょうか?
はい、あえて窓を入れています。
まず、視線が抜けると広く感じるのと、光が入ってくることで明るく感じるので、壁の全面に収納を設置とせずに、真ん中に窓を入れました。
この物件はサイドに窓をつけることが出来なかったので、風の通り道を考えたとき、ここに窓が必要でした。夏の日差しを遮り、冬の光を取り込む。そして窓を開くと風が抜ける通り道が出来るようにしなければなりません。そのためには、窓はどこにどの大きさのものを設置するのか、考えて設計することが重要になります。
狭小地の課題はスペースをどう作るか
横ではなく縦に広げる工夫
3階は洋室2部屋、そしてこの物件の大きな特徴の一つである屋上についてお伺いさせていただきます。
まずは洋室ですが、ウォークインクローゼットにロフトと収納スペースは抜群ですね。
そうですね。今回の物件はスペースが限られていて、いかにスペースを有効活用するかを考える必要がありました。そういう意味でロフトは、横にスペースが取れない代わりに縦にスペースを取りに行った感じですね。
天井が斜めになっているのですが、こちらもあえてでしょうか?
そうですね。写真のベッドの設置場所が想定と違ったので分かりにくいですが、入り口から離れたところをベッドの頭として頂くと、天井が高く広がりを感じることが出来るので、通常よりも広く感じて頂けると思います。
今回の物件は屋上がありますが、珍しいのではないでしょうか?
屋上を設置するには、建物強度の課題や規制などもあるので、作るかどうかは検討が必要だと思います。今回の場合、初期段階から屋上ありの方針で検討を重ねてきました。 まず空間をとるには縦に広げるしかなかったのですが、道路と逆側も視界が抜けていたので屋上を設置することが出来ました。 バーベキューなどを楽しんでもらうには十分な広さじゃないでしょうか。
ありがとうございました。最後に、この物件の反応などはいかがでしたでしょうか。
Fプロジェクト初期ということもあって、色々と模索しながら作っていきましたが、出来上がったときの反応は上々で安心しました。 施工完了前に購入のご契約をいただけた事はうれしかったですね。