設計士が
事例を紹介
Case study #04大阪府大阪市北区 新築施工
街を知ることからはじめる
その街での暮らしに適した設計
住む人の事を考え抜いた
機能性重視の狭小地の家
地域の需要に合わせた家づくり
住宅地に建てる新築一戸建て
大阪梅田にアクセスが良く、古くからの家も多い住宅地の新築一戸建て施工事例についてお話をお伺いできればと思っています。
まずは着手にあたってどのような事を検討されましたか?
今回は施主がいる物件ではなかったので、街を知ることからはじめました。
立地はお話にあったように住宅地でありながら、都心へのアクセスがいい場所です。住宅地なので、このあたりで物件を探している方は概ね3階建てを希望されていることが多い、あとはどこで個性を出すか・・・という観点から入りました。
ただ、土地面積は広くはなく、狭小地に入るのでそのあたりも考慮する必要がありました。
天然の木材が味わいをつくる
デザインされた窓が美しい外観
まずは外観から色々とお聞かせいただければと思っていますのでよろしくお願いいたします。
見た目はフラットで窓の位置が特徴的ですが、どのようなこだわりがあったのでしょうか?
そうですね、まずベランダですが普通は道路側にベランダを設けることが多いのですが、今回はあえて道路とは反対の方向にベランダを設置しました。
その上で窓を組み合わせると建物の表情が面白いかなとおもってデザインしました。
デザイン的には2階の正方形の窓が4つ並んでいるだけが良かったのですが、消防車がもしもの時に助けられるようにと3階にも窓を設置しています。このあたりは規制に従ってデザインいたしました。
あとはガレージを内にへこますことで、建物の陰影をつけて少し印象的にしています。
ガレージは天井まで木目でおしゃれに仕上がっていますね。
木は天然の木材を使用しています。木目が綺麗な杉を利用していて、節がないように気を付けて選びました。 天然の木材はすべて色が違うのですが、今回は耐火用に加工しただけで色を入れず、素材の色そのものなのでそれもポイントですね。この天然の色むらが面白いと思うんです。 あと、天然の木材は時間が経つと色も変化してきて味が出てきますので、その変化も楽しんでもらえたらと思っています。
玄関扉も木目で統一感がありますね。ただ角度が斜めになっているのはなぜでしょうか。
玄関を斜めにしているのは入りやすくするためですね。
車がガレージにあるときに、角度があった方が入りやすいのであえて斜めにしています。
扉のデザインは、壁とひと続き感を出すためにガラスは無しで、木目や雰囲気が壁と出来るだけ近い商品を選びました。
その他にこだわっているポイントなどはありますでしょうか?
そうですね、昔の家って門扉があって、フェンスがあって、そこから少し進んだところに玄関扉があるつくりが多かったと思うんです。 ここからが家ですよ、っていう明確な境目が無くて、門扉から家まで少しのアプローチがあって内と外の境界があいまいだったんですが、それがいいなって思っています。 だから今回の家も宅配ボックスやインターホンは、玄関扉のすぐそばではなくて少し手前に設置して、玄関まで距離をもたせています。
玄関は圧迫感を感じさせない工夫
水回りは機能性重視の設計
まずは1階の玄関と水回り箇所からお話を伺わせてください。
玄関ですが、靴を脱ぐたたきからシューズボックスまで距離がありますが何故でしょうか?
収納スペースをたたきに作ってしまうと、大きくスペースを取ってしまい、圧迫感も出てしまうのであえて廊下部分に設置しました。 シューズボックスは収納量を考えると壁一面にした方がいいのですが、空間に広がりをもたせるために、あえて腰までの高さのものを設置しました。 今回の土地は狭小地なので、収納スペースを多く作る事が出来なかったのですが、階段下にも物置を作っているので、1階の収納はまかなえるかなと思っています。
お風呂や洗面所、脱衣所、トイレなどの水回りのこだわりポイントは何でしょうか。
基本的に水回りは毎回シンプルにしています。タイルを張ったり、過度な装飾やインパクトのあるデザインは無いですね。今回は脱衣所、洗面所はブラウン系統で統一し、トイレは落ち着くように白で統一しています。 洗面・脱衣所はたっぷり収納出来るようにしています。脱衣所の収納の扉は使い勝手のいいように付けていません。 基本的に洗面・脱衣所や風呂、トイレなどは家のメインではないので、いかに機能性を高めるかを重要視しています。
設計士が光と風の通り道をつくる
窓の大きさ・形・場所には意図がある
続いて2階のリビング・ダイニング・キッチンについてお伺いさせていただきます。
デザインは白の壁に窓枠の黒をはじめ、全体が白と黒でまとめられているように感じますがいかがでしょう。
そうですね、リビングは全体的に色を入れずにモノトーンでまとめています。
床のフローリングは今回は濃いめの茶色を選択しました。
フローリングのバリエーションはいくつかあって、色は白系や薄い色、濃い色の木目などの種類があり、幅も広い・狭いなどがあります。ただ、時代時代で流行りみたいなものがあって、それがまわっているように感じています。
最近はグレー系のフローリングを好む人が多いですね。
リビング側にあるベランダへの出入口、キッチン側には大きな窓があり、サイドにも窓を設けられていますが、どのような意図があるのでしょうか?
道路側にあるキッチンの窓からは、光が多く入ってくるよう大きな窓を設置しました。 サイドに窓を取った理由として、このエリアを調べたとき、東西に風が吹く地域だったので、サイドにも風が通るように窓を設置しています。ただ、大きな窓にすると隣が見えてしまうので、そのあたりは計算しながら設計いたしました。
窓の配置は光や風を計算して作っているんですか?
そうですね。地域ごとに風の吹く方角が違うので、事前に必ずチェックしています。
地域ごとの風向きに合わせて窓の位置や大きさを決めていて、家の中に風の通り道が出来るように設計しています。
あと、窓があることで部屋にぬける箇所が出来て落ち着くと思うんです。それらを考慮した上で、最終的に外部からの視線や光の加減をデザインでどう解決すればよいか考えています。
風の通り道や光の入り方などは設計する側の責任だと思っています。だからこそ窓の形や場所、大きさなどにこだわって、すべて計算した上で設計をしています。
キッチンは部屋の一部
コミュニケーションを何より重視
次にキッチンについてお聞かせ頂ければと思います。
まず道路側にリビングではなくキッチンにした理由はこだわりあってのものでしょうか?
そうですね。まず手掛けるどの物件もキッチンにはこだわることが多いですね。 今回は方角として道路側から光が入るので、道路側にベランダを配置すると窓まで距離が出来て光が入りにくくなるため、キッチンを持ってきました。 あと、道路幅が広めで外からの視線も気にする必要が無かったというのもあります。間取りの配置は毎回色々と考えますね。
キッチンですが、通常よりも広く感じるのですがいかがでしょうか。
はい、毎回キッチンは少し広めにとるようにします。
あと、キッチンってリビングにいる家族とコミュニケーションをとる場所だと思っているので、キッチンだけを区切るのではなくて、部屋にポンっと置くイメージで配置しています。
キッチンとダイニングがはっきり分かれないように心がけつつ、どこにおくとコミュニケーションが取れるのか、ということを常に考えています。
なるほど、位置はとても重要ですね。今回の家ではキッチンの窓も印象的ですね。
やっぱりこの物件のキッチンの窓はアイコンじゃないですけど、この家のポイントの一つだと思います。この窓から光が入るので、今回のキッチンはとても明るくなってます。
ちなみに、光が入って明るいため、キッチンの色も黒を選択しました。
黒って暗くなるので使う場所を選ぶんですが、窓からの採光を考えるとカッコいいかなと思って選択しました。
その他にキッチンへのこだわりはありますでしょうか?
あとは2階に上がってきたときの景観って大事ですよね。
2階にあがってきて突然キッチン。にはならないようにしています。
お客様をお迎えするときに、階段をあがってキッチンを通ってリビングだと、お客様も気を使ってしまうので、階段・リビング・キッチンの配置は意識しています。
ライフスタイルによって変えられる間取り
スケルトン・インフィルで作られた家
3階は洋室2部屋とトイレがあります。洋室は建具も床のフローリングも白で統一されていますね。
そうですね。3階はあえて色を抜いて白を基調としています。
扉もすべて白系で統一していて、扉のデザインを活かすというより一続きの壁の一部という感じで繋がりを意識しました。
各部屋には窓があるので明るさも十分確保できると思っています。
なるほど。ちなみに3階にトイレというのは珍しいのではないでしょうか?
3階にトイレを設置するには設備の問題があります。3階に水回りをもってくるとなると、加圧ポンプで水圧を上げる必要があるので、設置できない地域もあります。
でも、大阪市内は水圧の問題は大丈夫なので3階にも設置しました。
設置理由ですが、夜などは3階にトイレがあった方が使い勝手はよいですし、狭小だと音の問題でリビングとトイレとの距離も出来れば離しておいた方がいいと思っています。
なので、今回の物件はリビングを広く取るという意味もあって、1階と3階にトイレを設置しました。
この物件、2LDKなんですが、3階のうちの1部屋は、区切ることも出来るようにしているのでしょうか。
そうですね。まずこの物件は2LDKにしたかったんです。 ただ、2LDKだとお子様が大きくなって個室が必要になったとき、部屋数が少ないので仕切って3LDKになるようにしています。仕切って頂くと3LDKになるのですが、今は仕切っていないので間取りとしては2LDKになっています。 スケルトン・インフィルという工法で、今回の物件は構造で必要な壁以外は、なるべく仕切りを設けずに大きな間取りにしています。住む方のライフスタイルに合わせて、必要なら部屋を仕切ってもらえればと思っています。