設計士が
事例を紹介
Case study #08兵庫県尼崎市 新築施工
住居の設計は住みやすさが一番。
変化する光と風を読み、
その地域で暮らすに最適な家、
最良の空間を設計することが大切。
地域を理解し地域になじむ家をつくる
日常を重ねる場所だからこそ重要
インタビューは3物件目となりますが、今回もよろしくお願いいたします。
それではまず、この家のコンセプトを定めていった経緯からお聞かせいただけますでしょうか。
そうですね。
まず物件としては駅近なのですが広さは狭小地でした。
二方向が道路の角地ではあるのですが、一種低層(第一種低層住居専用地域)でいろいろと法制限があり試行錯誤しました。
なぜ3階建てにこだわったのでしょうか?
このエリアは古くからの家も多く残る住宅街でした。大阪や兵庫へアクセスがいいので需要も多い地域です。この辺りで家の購入を検討されている方は、単身よりはご夫婦やご家族の方が多いんです。 その場合、2階建てよりも3階建てに要望が集中してしまうので、3階建てを何とか建てたかったというのがあります。
家を建てる上で地域性というのは重要なのでしょうか。
はい。私は大切にしています。
この地域は、色々な要素が混在している街という印象でした。昔からある家と新しく出来た家、新たに建設された大きなマンションもある地域で、競うように様々なデザインの家が建てられていました。それを見たとき、今回建てる家は色を抜きたいなと思ったので、あえてシンプルに、白い四角形の組み合わせで設計していきました。
あとは、「街になじむ」と表現したらいいかわかりませんが、遠いところから見たときに違和感があってはだめだと思っているんです。遠くから家やその周辺を見たときの印象はどうなるのか、毎回そこはしっかり考えていますね。
今回の場合、3階建てが少ない地域で3階建てを建てるので、そこだけ若干圧迫感が出てしまうかなと思いました。そこで、3階部分は後ろにあえて下げて、外からはあまり見えなくしています。
建てる家だけでなく、地域とのバランスも考慮して進められたんですね。
はい。あと、地域性で言うと太陽の方向や風の向きも重要ですね。
個人的にですが、出来れば朝日が入る所で朝食を食べたいですし、西日は避けたい。夏の日差しはしっかりと遮ってほしいですし、雨露もしっかりとしのぎつつ、風は通る方がいい。このあたりを実現させるのも設計士の仕事だと思っています。
費用感も地域に合わせないといけないですし、色々と考えながら進めていくことが大切ですね。
機能性・実用性を重視した窓
空間を損なわないフレーム選び
家の佇まいは地域性や景観を考慮されているとのことでしたが、外観についてもう少し詳しくお話をおきかせください。
前回の物件(大阪府大阪市東淀川区)とは対照的で、今回は窓が小さいと思うのですが、あえてそうされたのでしょうか?
[前回の物件:大阪府大阪市東淀川区の新築戸建て]
そうですね。デザイン面で言うと、大きな窓をとってしまうと印象がつよく、アクセントになってしまうので、今回の物件は小さめの窓にしています。
ただ、機能面でも色々と考えていて、まずこの窓のある方角は道路側なので、しっかりと光があたります。逆に夏は暑くてカーテンを閉めるケースも多いので、この窓は遮熱ガラスをいれてあえて小さめにしたという理由もあります。
窓は大きく沢山とったら明るいかというと、実際はそうでもないんですよ。
この大きさの窓でも十分明るさを確保できます。今回はデザインと機能性・実用性を考えたときこの大きさ、この配置になりましたね。
家の角にスペースがありますが、このスペースはなんでしょうか?
家の角は斜めにする場合もあるんですが、今回はあえて角のスペースを設けています。 あそこはもともと、シンボルツリーを入れても面白いかなと思ってとったスペースなんですが、実際には自転車を止められる方が便利かなと思ってシンボルツリーはやめました。 このエリアはご夫婦や家族がお住まいになる事が多いので、車はもちろん自転車を置くスペースもあったほうが便利なので確保したスペースですね。
扉や階段などの玄関まわりはすっきりとした印象になっていますね。
扉は木目だと合わないと思ったので、なじむようにグレーっぽい色のものを選択しました。 個人的に、窓やドアを目立たせるより、陰影をしっかりとつける方を大切にしています。そういった意味では造形をとても重要視していますね。外観は最初の形にとことんこだわります。 たとえば玄関扉前の階段も、細かいですが外に出すのではなくて内側にいれて全体の形に影響が出ないようにしています。でも、どうしてもポストだけは外になってしまいます。火災に繋がってしまうと怖いので外で完結させたいですね。
2畳ほどのシューズクローク
容量たっぷりの玄関先収納
それでは、内装のこだわりについてお話をお伺いさせてください。
まず1階の玄関ですが、大きなシューズクロークがありますね。
シューズクロークは需要が高いですね。
この物件のシューズクロークは広さ2畳程あって、コートもかけられるようになっているので、容量的には問題ないかなと思います。あと、出入りも簡単で邪魔にならないように、扉は折れ戸にしています。
一応お客様用のスリッパを片付けておくために、シューズボックスも玄関横に設置しました。
玄関扉とアクセントの壁がマッチしていますね。
この壁はエコカラットなんです。タイル調のデザインをセレクトしたんですが、それを綺麗に見せるために間接照明も入れています。 玄関はその家の顔、お客様をお迎えする場所なので、ちょっとでも印象が良くなるようにしたいですね。
1階には洋室もあってこちらは引き戸なんですね。
そうですね、引き戸はスペースが必要ですが、出来るなら引き戸の方がいいと思っています。 1階の洋室は、床材は玄関とあえて続きになるようにして、壁面収納も壁に同化するよう白にしています。濃い色だと狭く感じてしまうので、ここは明るい色で統一しました。壁面収納の扉は壁と同じ色にしていますが、逆に出入口にだけ色がついているのでわかりやすいかなと思っています。
階段の手すりは白色なんですね。
白だと目立たないかなと思って、白にしました。
回り階段なので手すりを設置していますが、本当は手すりを右側につけたかったんです。
ただ、右につけるには階段のまわり方を逆にしないといけないんですが、そうなると寝室のすぐ横がトイレになってしまうので、それは微妙だと思って、最終的に今の並びにしました。
ちょうど良い光量
陽の光を計算した設計
2階はリビング・ダイニング・キッチンにお風呂やトイレなどの水回りもありますね。
これまで狭小住宅の水回りは1階が多かったと思いますが、なぜ今回は水回りが2階なのでしょうか。
この物件は2方向が道路なので、すぐ前に建物がなく抜けが良かったのでベランダをあえて3階にしたのですが、もし1階に水回りを持ってきたら洗濯が大変になるんです。 だから、2階はリビングもあるのですが、水回りもこの階にするしかなかったんです。
LDKは全体的な色合いが明るく優しい雰囲気で、窓枠も白ですっきりとした印象になっていますがあえてでしょうか?
あえてですね。外観が白だったので、お部屋も柔らかく優しい色合いでまとめています。 窓枠の白ですが、窓も空間の一部だと思っています。なので、主張する要素であってはならないという考えがあって、空間になじむ色を毎回選択しています。ちなみにこの考え方は昔からなんです。 空間として魅せたい。無駄を省いて極力シンプルに構成する。特に今回のような狭小地や狭い部屋の時は、そこに家具が入ることを考えると、部屋の色数は少ない方がいいと思っています。
部屋のライトがダウンライトだけなのも、こだわりポイントでしょうか?
こちらもあえてですね。LDK自体は広くはないので、ダウンライトで十分明るさは取れると考えました。部屋を広く感じてもらえるように、白系でまとめて明るくしているので、余計な光量は必要ないと思っています。
写真では窓が綺麗な青ですが、これは写真だからでしょうか?それとも青い窓なのでしょうか?
このガラスはLow-Eガラスという遮熱ガラスを入れていて、若干青みがあるので恐らくそのせいかと思います。外観の時にもお話しましたが、窓の配置・大きさは太陽の位置と光の入り方を計算して決めています。 朝に陽の光が差し込んできて、西日は入らないようになっています。 ちなみに、2階の窓は3方向に設置しているのですが、これは風の通り道を作るためでもあります。窓のタイプも上げ下げ窓ではなくて開き窓にしているのですが、それは風が抜けやすいからです。 色々調べてみたところ、この地域は午前中南から風が吹くのですが、午後になると北からに風向きがかわるんです。阪神間は浜風の影響で、風向きが変化するので一方向だけ窓をとっても、いいかんじに風が通ってくれません。設計段階でしっかり風の通りも考えて窓を作りましたね。
バルコニー周囲が気にならない
抜けがいい広々スペース
3階はバルコニーと洋室2部屋ですが、バルコニーが広いですね。
先ほどお話した通り、3階からの抜けが良かったので、どの部屋からでも出られる広いバルコニーを作りました。じつは隣も含めてこの辺りは2階建ての建物が多く、腰壁を高くする必要が無かったので、空間がぬけて開放感がとてもあると思います。 外から中が見られないのもポイントですね。
洋室は一直線に並んでいるんですね。
一直線になっていることで荷物の搬入が楽なのでそうしています。廊下も必要ないですし。 ちなみに洋室はどちらも引き戸にしています。収納スペースも各部屋と階段上に設置していますので十分だとは思います。
最後に家づくりのこだわりポイントなどがあればお聞かせいただけますでしょうか。
家を設計するときに心掛けていることは、とにかく住みやすい家にすることですね。 住みやすいが一番。デザインはその次です。 住みやすさの基準は今までのお客様からのご意見や、過去の経験の積み重ねですね。これからも、住みやすさにはこだわっていきたいと思っています。