設計士が
事例を紹介
Case study #11大阪府摂津市千里丘 新築一戸建て
狭小地かつ旗竿地
様々な課題を設計で解決
空間による広がりがつくる
快適な一戸建て住宅。
光を取り入れ空間の広がりをつくる
狭小地の一戸建てを快適な住居にする設計
本日はFプロジェクトの施工事例として、大阪府摂津市の新築一戸建てについて、お伺いさせていただければと思いますのでよろしくお願いいたします。
まずはこの家のコンセプトからお伺いできますでしょうか。
この家のコンセプトは快適さを追求した住まいです。この家の建っているエリアは住宅街になっていて、土地も周囲が住宅に囲まれている旗竿地だったので、その中でいかに快適に暮らせるかを重視して設計しました。 たとえば玄関に広めのスペースをとったり、2階部分を吹き抜けにしたり、平面的な広がりではなく縦横の空間の広がりを意識しましたね。
住宅街の旗竿地とのことですが、具体的な立地条件はどのような物件でしょうか
この場所は一戸建てが多く集まる住宅密集地です。新しい家もあるんですが、古くからの住居も多いエリアですね。 広さはいわゆる狭小地で、さらに土地の形が旗竿地(道路に面した細い敷地があり奥にまとまった広さの土地がある土地)の物件になります。 旗竿地はその特徴から人気が低く,さらに日当たりが課題になる北入り(玄関が北側を向いている)だったので設計でカバーする必要がありました。
狭小地における設計のポイントはありますでしょうか?
まずなにより狭いので施工は大変ですね。もちろん設計段階でも広い土地よりも考えなければならない事は多くなります。 排水をどうするか、近隣の住居と目線が合わないようどうするのか、など普通より気をつけなければいけないポイントは多いんですが、そのあたりは経験でカバーしている感じですね。
光の入れ方にこだわることで建坪以上の広さを体感できる
具体的な間取りなどはどう決められたのでしょうか
現場を見に行って漠然とではありますけど間取りは決まりましたね。奥まった場所にあるので、狭い路地を通った先の空間をどう出していくかを考えました。
空間を出す、とはどのような事でしょうか?
この土地は暗くなりがちな北入りの土地だったので、土地を見たとき光の入れ方を考える必要があるなとおもいました。 平面的な広がりじゃなくて空間をつくることで圧迫感をへらし、居心地のいい空間になるんじゃないかなと考えたんです。 たとえば吹き抜けを作ることで家の中に抜け感がでて実際の建坪よりも広いと体感できるんじゃないか、とかですね。
現地をみて設計をすることは重要なんですね
そうですね。実際に見てみないとわからないこともたくさんありますので大切ですね。 周辺の建物の雰囲気だったり、道路の幅だったり。一戸建ては周辺の住宅や景観も取り入れてデザインすることが大切だと思います。
まわりを住居で囲まれた狭小の旗竿地
周囲の景観になじむシンプルな外観
住宅街の景観になじむシンプルな外観
外観はモノトーンのシンプルな作りですが、どのようなポイントがありますでしょうか
旗竿地なので、写真でもわかるように建物の見える部分は少ないんです。
その見える部分をどう見せるか、を考えて設計しています。
白の外壁に格子状のコートラインを目隠しの意味もあって設置をしたり、全体を四角で構成して角を出しつつ陰影で立体感を出すようにしました。基本的には暗い印象にならないように気を付けました。
とてもシンプルな外観ですね
そうですね。この辺りは古くからの家も多い住宅街なので、新旧立ち並ぶ住宅の景観の中にあっても違和感が出ないようシンプルながらも陰影のある和を取り入れた外観にしました。 ちなみにコートラインの上にある3階の壁は構造壁ではなく、外観のデザインとして作っています。角をあえて作ることで立体的に見えるようにしています。
その他にこだわりポイントはありますでしょうか
そうですね。玄関ポーチの段は通常2段なんですがこの物件は1段にしています。
玄関ポーチの段を2段にすると、車でバックしてきた時、こすってしまう可能性もあるので、外は1段にして、室内を2段にしています。
あとは玄関扉も見た目や使い勝手も考慮して、正面に据えるのではなくあえて斜めに設置しています。
写真だとすごく分かりにくいんですが、洗車などで必要な水道の蛇口もあって、その奥は自転車が止められるスペースになっています。
玄関はあえて広がりをもたせ
住む人が使い方を考えられるスペースに
外と中の空間を繋ぐ、ちょっとした談笑ができるスペース
こだわりのひとつである玄関ですが、広くスペースをとった意図は何でしょうか
待合の用途も兼ねて広くしています。
例えば来客があったとき、2階にあがってもらう程でない場合でも玄関スペースが広いとちょっとしたおもてなしが出来たり、小さなテーブルと椅子があれば少しお話が出来たりしますよね。
実際お住まいになる方がどう使われるかはわからないですけど、昔の一軒家ではよくあったと思うんですが、外でもなく室内でもないような少し広めの玄関や廊下、縁側のような空間があればいいなとおもって設計しました。
アクセントカラーの壁と大きく取られた窓が印象的ですね
玄関を開けたときの正面がこの壁になるのであえて印象的にしました。
窓を設置した壁は、外に障害物がないのでとても明るいんです。
だから大き目の窓をとって光が入るようにしています。ただ透明のガラスだと中が見えてしまうので半透明のガラスを採用しました。
収納スペースもたっぷりありますね。シューズクロークがあるのに物入があるのはなぜでしょうか
Fプロジェクトの物件は、収納は比較的多く取る物件が多いと思います。 今回もファミリーが住む想定で設計したので、シューズクロークと物入を設置していますが、別々にしている理由は、靴とコートを掛ける場所は別にしたいというお客様のご要望も多いからですね。 コートはもちろんですがゴルフバッグやスーツケース、夏のプールなども十分置けるスペースになっていると思います。ただ、スリッパ入れも必要なので、それとは別にカウンターの収納も設置しています。
ポイントをおさえることで必然的に間取りが決まる
1階にはウォークインクローゼットつきの7.5畳の洋室がありますね
そうですね、収納は住宅選びのポイントになることが多いので各部屋に作る事が多いですね。 ウォークインクローゼットは人気も高くて、家選びの必須にしている人も多いですね。ただ、間取りの取り方をしっかりと考える必要があるので、もし新築を建てる場合は間取りの取り方にはこだわられた方がいいと思います。
1階のこの位置に洋室がくるのは考え抜いた結果、ということでしょうか
はい。まず隣との距離も近い物件なので、隣接している部分は採光の必要が無く、窓は風が通る小さなもので十分な水まわりにしました。窓が小さくてよいので隣の視線や気配を感じることはありません。 また、小さいけれど家庭菜園が楽しめる程度のお庭のスペースはあったので、お庭が洋室に面するように配置した結果、洋室の位置が決まりました。 そうなると階段の場所も必然的に決まります。また、階段下のデッドスペース活用のためにトイレの位置も決まりました。このようにひとつひとつ必然的に決まっていった結果、この間取りとなっています。
自然光を取り込む明るい吹き抜け
縦の広がりが圧迫感を解消し抜けをつくる
吹き抜けが空間の抜けを演出する
吹き抜けから光が入り、とても明るいリビングですが窓の位置や大きさにもこだわりはありますでしょうか?
下の窓は開閉が出来るようになっていますが、位置は目線より高い場所に設置しました。あえて少し上に配置することで自然と目線が上がって、吹き抜けに目が行くかなと思っています。 周囲が住宅なので、吹き抜けの窓ガラスは風景を見ることもなく、逆に外から見られる可能性があったので半透明にしました。 上の窓は防火窓を入れているんですが、出来れば大きなものが良かったんですが、これ以上大きなサイズが無かったんですね。はめ殺しはあったんですが、そうするとシャッターがいるのでこれになりましたね。
リビングやダイニングの窓枠やサッシ、扉も白で統一されていますね
色を入れすぎるとうるさくなるのであえてシンプルにするようにしています。 お客様がお住まいになるとき家具が入るので、どうしても色数が増えるんですね。だからこそはじめは出来るだけシンプルにしようと考えています。
吹き抜けの上についているファンは必要なんでしょうか?
サーキュレーターですね。これ、見た目じゃなくて機能面で必要なんです。 温まった空気は上にあがり、冷えた空気は下に降りてきます。サーキュレーターを回すことで空気を循環させることが出来るので、部屋の温度を一定にする効果もあります。天井が高い吹き抜けにサーキュレーターは必要ですね。 最近の家はどれも気密性が高いので、この広さだとこれくらいの大きさで十分循環すると思います。
3階からは2階のリビングが見えるように窓がついていますが、これは空気の通り道を作るためですか?
空気を抜くためには3階にも窓があった方がいいと思っていますのでその側面もありますが、ただその役割とは別に3階とリビングをどうつなげるかを考えて設計・設置しましたね。 ここに窓があるだけで、2階のキッチンで調理していても3階にいるお子様の気配が分かるじゃないですか。 たとえば電気がついているのが分かったり、人影が動いているのを感じたり、音がすこし漏れて聞こえてきたり。そういう家族の気配がなんとなくわかる事ってとても重要だと思うので、そのために窓を作りましたね。
リビングダイニングはよく見ると照明はダウンライトとスポットライトだけですね
そうですね、窓からの光で明るさは十分とれていると思っています。明るさは後からでも照明を置くと足すことが出来るのであまり明るくなりすぎないようにしています。 明るさよりも空間としてメリハリをつけることを意識しています。 たとえばこの物件だと、少し細い路地を通って玄関扉を開くと玄関スペースに広がりがある。また狭い階段通路を昇ると広いリビングがある。 狭いところから広いところ。暗いところから明るいところ。空間としてのメリハリつけることを狙って設計しています。
収納のあるリビングは使い勝手のよいバルコニー付き
リビングにも収納があるんですね。
リビング収納も便利なので人気がありますね。
下部分は空いていてロボット掃除機の充電器が置けるようになっています。
バルコニーもリビングに隣接していますが、奥行きは広めですか?
バルコニーだけで4.5帖ほどありますね。少しでも広い方が作業はしやすいと思って広めにとっていたと思います。
あと、写真では見えないんですが隣と近い方にはパーテーションを立てているので目線は感じないと思います。
周囲に高い建物が無いので抜けはいいですね。
白で統一されたキッチン
収納量を確保することで使い勝手を快適に
住むときに増える家具が映えるよう色味をおさえる
キッチンは白で統一されていて、リビングダイニングにもマッチしていますね
リビングやダイニングと同じで、家具はここから増えていくので、備えつけの建具は色味を消している方が他の家具が引き立つと考えています。 色味は基本的に、床に近いものは床の色。壁に近いものは壁の色に合わせていくことで、お住まいになる方が設置する家具が映えると思っています。 あとはこのような狭小地の場合、少しでも広く見えるように色数を少なくして統一感を出すという狙いもあります。
外観のコートラインはキッチン直結のサービスバルコニーの目隠しなんですよね
そうですね。ゴミの収集日まで置いておくためのスペースとして、キッチンに近い場所にバルコニーの出入り口が設置されているケースは多くあります。 一応外から見えるので、目隠しの意味でコートラインを設置しています。
その他キッチンのポイントはありますでしょうか。
キッチンはやっぱり収納量でしょうか。物も多くなりますので、収納量は十分に確保することが大切だと思います。 あとはどの物件もそうですが、キッチンからは全体を見渡せるようにしていますね。
各部屋に収納スペースを確保
スペースにゆとりを持たせた広がりのある設計
スペースをゆったりとって広さを意識させる
3階は洋室が2部屋、どちらも収納付きで1つはウォークインクローゼットがついていますね
1階の洋室もそうですが、ウォークインクローゼットは人気なので設置しています。3階のウォークインクローゼットは扉を広く取っているのが特徴ですね。 3畳ありますので、十分に荷物を置いていただけると思います。 あと、3階の洋室はどちらの部屋も壁の1面だけアクセントカラーとして壁紙の色を変えています。恐らくベッドの頭側になるだろう、という面の色を変えていますね。
階段を上がったホール部分は少し広めのスペースになっていますね。
そうです。ホールは奥行を持たせてゆったりめに作っています。
あと3階のホール部分は例えばカウンターデスクを置いてもらえばワークスペースとして活用いただけます。
荷物を上にもっていくときに運搬しやすいようにっていうのもありますね。
お住まいになる方がどう使われるかは分からないんですが、この家は全体的にゆったりとスペースや空間を取っていて、それぞれのバランスにはとても気を付けました。
ありがとうございました。ちなみにこの物件の皆さまの反応はいかがでしたでしょうか。
実は建ててすぐに売れてしまったのであまりご意見を伺う機会が無かったんです。 でも、それでもアンケートも好評の回答をいただくことが多かったのでよかったです。